調べ方

可能性

  日常語で、「可能性がある」 と言うとき、Possible と Provable の二つの意味を混然とに使っているようです。  哲学の世界では、Possible と Provable とは使い分けていますけど。

  この BLog では、とりあえず、現在に地表の構造物を選び出して、1200~1300年の起源を持つものと考えて、・・・ つまり、ポッシビリティを提示します。  その後、幾つかの条件に当てはめて、よりプロバビリティが高いライン (あるいは ポイント) を残してゆくのです。  条件の当てはめに際して、人それぞれのやり方がありますが、筆者は 「数理的/統計的」 な手法で迫ってみようと提案しているのです。
  順次、具体的に示して行きますが、いにしえびとの行動パターンのモデルを幾つか想定して、それに応じた数値処理がありう得ると考えています。

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何が? 何を?

  結局、何をしたいの? 何ができるの? と言う問いに答えてみたいと思います。

  このことは、ずっと自問自答しています。  可能性として書けば、先ず第一に、現在の地形の中から 「古代メッシュ」 が読み出せるか? ということです。  次に、往時の人が使った 「ゲージ」 が導けるか?、それと関連して往時の 「尺度」 を復元したいということです。
  その次に、彼らはどのようにして 「メッシュ」 を創り上げたかということです。  絶対方位重視か、距離・直角重点主義か、それらの組み合わせ・採用順位は?
解明の結果として、宇宙観 (天文学) が判り、技術力が推定できるということです。

  八賀 晋氏の概論(1984)に依ると、条里制を読み解くときの目的・手段分類として、
    1)地割論
    2)起源論
    3)集落論
    4)景観論
    5)地方条里論
の5つが提唱されています。  私は異分野の人間ですから、この分類を尊重しながらも、違った観点を導入すべきだと思っているのです。  手前味噌と笑われるでしょうが、「数理的/統計論的」 な手法が可能性を秘めていると思うのです。  この件に限らず、発掘資料の理化学的解析 (例えば年代測定法) が重要なことは、この10年間ほどで実証されつつあるのは皆さん承知の通りです。

  「数理的」 手法に関しては、都市工学的な観点からの提案もあって、古代都市 (城都) 地下遺構の計測や古代街道 (地下遺構) の計測の知識が蓄積されて、やはり、この10年急速に進展していると、筆者は思います。
  最近、その分野の一人、井上和人 氏の論集(2004)を読む機会を得ました。  多くのことを学びましたが、この世界の重鎮に対して大変失礼だが、自然科学 (数理的物理屋) の観点からすると、その世界の常識の範囲の中で 「数値処理」 を使っているという点が気になります。  も少し強く表現すると、哲学的思索を重ねた末に、一つの結論を持った後に、「数理/数値」 に裏づけを求める・・姿勢が (筆者からすると) 気になります。
  ひとり、井上氏を責めるのではありません。  同じ計測結果と数値処理結果を使いながら、殆んど逆の結果に導かれる論争も少なくないのです。
  筆者とて、自然科学の分野で、「哲学的思索なき計算屋」 を 「呉服屋の番頭 = 色々の柄を提示するだけで自分の意見を述べない」 と厳しく糾弾してきました。  その通りですが、「自分(達)の売りたい商品だけ前面にを押し出す = 呉服屋の丁稚」 では困るわけです。

  具体的に述べましょう;-
この世界で、「平均値」 を使って議論されることは多くあります。  例えば、「条里の間隔の平均値 (ゲージあるいはモジュール) は109.2mであった」 というように。  筆者の主張では、大きめの値、小さめの値があるわけですから、「計測結果の出現頻度分布」 を示した方が情報量が格段に増すと言いたいのです。  もちろん、そのためにはより多くの計測結果を揃える必要があるかもしれません。  しかし、「出現頻度を描くと2群に分かれる」 ような場合は少なくないのです。
  たとえば、30個20組のデータがあるとき、思慮なく、ひと組ごとに平均を取ってしまうと、 「個性」 の塗りつぶされた20個の 「平均値」 だけが残ることになってしまいます。  その 「平均値」 の 「平均」 を採ると、初めから600個の平均を採ったのと同じ結果に行き着きます。  「平均を採ることで誤差が相殺されて真に近い値が得られる」 というのは危険な考え/幻想に過ぎません。

  筆者とて、即効薬のような手法を用意しているものではありません。  が、まず、データを予断なくジックリ眺めて、計測手法自体が間違いないかチェックして、戻って、行っての繰り返し作業を経て前に進みたいと考えるのです。

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予備的計測 実務

  実務的な作業に入ります。

基準線の想定

  当初の作業は、Web 地図に依らないで、リアルの、1/10000地形図の依るのが妥当だと思われます。  100mの長さは10mm、650mは65mmで表現されますから、実務的にも適宜なサイズなのです。  1/5万 では不可能で、逆に、いきなり1/2500 が与えられたとしても、1300m(2里)が520mmとなると、「襷には長い」 領域に入ります。

  先達の提案と完全に独立に基準線を選ぶなどというおおそれたことを言うつもりはありませんが、少なくとも、東西線の基準については、自分自身の提案があります。  それは、『道フェチ』 としての思い入れに依るものですが、「岡山放送KK」 の南門前の溝つき小径です。  改めてどこかに書きますが、中学生の少年の頃から 「この道は只者ではない」 という気持ちがありました。 (← この記事を書いたときは、なっ、な~んと、「500年そこいらは遡れそう」 と書いています。  その意味では可笑しいですね。)

  この道を 「里」 の境を示す重要な道と想定し、基準に選んでみます。  北側に、650m程度離れた所では、岡山大学(津島)や公共施設にカバーされて、適宜な道は認め難い状態です。  南に眼を転じると、岡山商科大学付属高校 [旧・吉備商] から西に向かって 「京山」 山裾に向かう線は可能性を持っています。  東へも進めそうです。
  更に650mほど南には、「旧・萬町(万町)」 = 1960年代には踏切があった・・・ から「奉還町」 を貫く道があります。  古い記録などに依ると、「奉還町」 の成立は大政奉還によるもので、江戸時代は 「西国街道(山陽道)」 であったと教えられます。  うんと西には、式内の村社・「國神社」 があります。
  これだけ揃えば、最初の基準の想定に自信が出てきます。

  次に南北線を探します。  後で気が付けば理屈はつくのですが、先達が岡大(津島)の南北通り [通称:銀杏並木] が里境であろうという説を参考にします。  それを宜しいとすると、650m西には(岡山)県営グラウンド西のラインがあります。  このラインの南の方がある特徴を持っています。  この市道は、1kmほど先で斜行して、ラインを100mほど西にずらしてしまうのですが、斜行しないで細い道にも進めるのです。  このような構造を見ると、元来細い道があって、拡幅が困難な部分で斜行したと理解することができます。
  細い道を更に南へ進もうとすると、一層細く、湾曲した形を示しています。  ここでも、近世の 「都市計画」 に逆らう 「始原的構造」 を見て取ることができます。  このような考察は、余り深入りすると、恣意的考察に陥りますので、この辺りで止めて置きます。
  ただし、この2本の南北線を想定した途端に、それに並行するラインが読めてきます。  必ずしも、650m程度離れずとも、110m程度の (地図上で11mm程度の) ラインが浮かび上がります。
  数理解析の技術論から見れば、この2本のいずれを基準にとっても構いませんが、先人の主張を受けて、「銀杏並木」 のラインを今回の作業の基準線に想定します。

ラインの番号付け

  当初は 「里境」 (650m程度の間隔のライン群)に注目していますが、すぐに 「坪境」 (110m程度の間隔のライン群) に言及するので、里境ラインには6番飛びの番号をつけます。  代数学で言うように、東西に X を、南北に Y を割り当てます。   東へプラス、西へマイナスの整数を割り当てて、南北基準線 X = 0,東へ X = 6、X = 12・・・西へX = -6、X= -12・・・/東西基準線 Y = 0 ・・・ とします。  坪境には、1、2、・・・5、7、・・・ -1、-2、・・・ -5、・・・ の数字をつけます。

  南北里線/東西里線を丁寧に拾い出したところ、X = +6、 0、-6、-12、-18、-24、 Y = +6、0、-6、-12 の10本が無理なく認められました。

例えば X=0 の詳細検討

  もう一度、南北に基準線に選んだ道 X = 0 を精査します。  まず、詳しく考えるとき、「銀杏並木」 のどちら側、あるいは中央を選ぶべきなのでしょうか?  南側の状況、左右に位置する 「坪境(の候補)」 などを勘案して、取り敢えず、西端の線を想定します。  南への延長線上には、絵図町の真ん中辺を南北に走る細い道(「ロイヤルホテル」敷地東辺) が220m程採用され、断続して 「旧・万町踏切」 に至り、また断続して、「桃太郎大通り」 から 「大供交差点」 の付近まで焼く1km程度が採用できそうです。  この部分は、今となっては道のみで、「銀杏並木」 以外では用水の名残を見つけることは困難です。
  この認定作業から
3ヶ月ほど経過して、「岡大敷地」 の北側を精査しました。  かねてから、上地図の上では 「擁壁」 が描かれており、Web 地図でも水路らしいものがあったのですが、現地踏査してみると、幅1mほどの水路と駐車場のアスファルトの上に、畦道境界が残してありました。  畦道部分は幅1.5~2mあり、全長で100m程度ありました。  これを採用するならば、「銀杏並木の北端」 (座主川架橋)地点では、西端ラインより3~4m車道側(東)にずらすべきかもしれません。  「銀杏並木南端(大学筋口)」 では、西端としておきましょう。

  この全長に関して、南北方位からの傾きを読み取ると、3.95km当たり50m程度のズレになっていますから、arctan(0.0152)=0.73度 が得られます。  なお、符号としては、真北より西に傾いているので、プラス0.73度と表現しておきます。  代数幾何学で、角度の取り方を 「反時計回り;プラス」 とする習慣に倣います。  ただし、この傾き角は零次のラフな認定で、厳密には僅かな調整が生じる可能性があります。

各里線の傾きについて

他の南北里線/東西里線について、同様な精査を施した後に、各線の正方位からの傾きを読み取ります。  得られた結果は、

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地図の基礎知識

  地図に関する知識の基本的な部分を整理しておきます。

緯度と経度

  地表の構造物を表現するには、基準ポイントからの方位と距離で表す方法があり、考古学的発掘などでは、従来はこの方法が主流でした。  緯度と経度で表現するのは、より厳密で普遍的な意味を持つと考えられますが、技術的に困難だったからです。  近年、GPS[人工衛星網を使った測地法]技術の進歩により、この方法に目が向けられています。
  さて、緯度と経度の実務的な問題を書き始めると際限がありません。  特に、2002年4月に 『測量法』 が改訂されたことが重要ですから、たとえば、ここ(事業者提供)をお読み下さい。  既に筆者が記したものでは、ここをお読み下さい。

適切な縮尺

  何が「適切な縮尺」かということは難しい議論です。  が、実務的には、100m~3km 程度の世界を読み取るのですから、また100mに対して望むらくは1mの精度が欲しいのですから、1/2万5千 ではやや粗いでしょう。  1/2千5百 では?  2.5kmが1mに描かれますね。  実在の1mは4mmですね。  紙地図だと、収蔵や経済負担を考えると微妙です。  Web地図なら、画面の20cmで現実の500mが描かれるので、リーズナブルでしょう。

紙地図の種類

  方位や寸法の精度を問題にするときは、国土地理院が発行する 「地形図」 に依ることになるでしょう。  1/5万、1/2万5千 が一般的ですが、今は、上に述べた理由で、1/1万が欲しいところです。  岡山市域では、「岡山」 と 「岡南」 が市販されています。
  特に微細精度を望むときには、市町村が用意する行政用の地図が利用できるかもしれません。  岡山の場合は、「市域図」 として 1/2千5百 が用意されています。

Web 地図の縮尺

  Web 地図の縮尺は 1/3000 が一番細密で、1/8000 などもあるようですが、ここでは1/3000 が有利でしょう。  ただ、過疎地(山間地)では、細密なものは供給されていない場合があります。
  どこかで述べるように、実作業での実験に依ると、距離換算で1m程度のクリック誤差で読み取れそうなので、実用上満足できます。

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予備的計測の流れ

  予備的な計測の作業の流れについて示します。  実際の作業内容や、得られた結果・経過については、稿を改めます。  非常に専門的で特殊な話題は、場合によっては、『極道唄 2』 を参照して頂くよていです。

基準線の想定

  現在の地表の状況だけから、条里の遺構を想定することは殆んど不可能です。  方法論としては2つの途が考えられます。
   1)取り敢えず、先達の意見に全面依存する。
   2)適宜に選んだラインから、無矛盾度の高いものを残してゆく。
どちらに依るにしても、確固と決めてしまうのでなく、数値的検討を経ながら 「想定」 を修整してゆく必要があります。  この 「想定」 や、以下に述べる 「選定」 「採択」 を実情に照らして修整することは、『無節操』 とは違います。  いくら強がっても、最後の審判は、地下から、「実物」 が掘り出されたとき下るのですから。

「モジュール」 の仮設定

  前稿で述べたように、格子の最小基本寸法 「1坪」 を約 109m としておきます。  実は、多くの専門書や調査報告書ではこの数値が示されていて、筆者にはその値の是非の検討は済んでいないと思われてなりません。  それゆえ、この数値こそがこれから最終的に決めたい量ですが、それを仮に定めないと、議論が進まないからです。  この最小基本寸法のことを 「モジュール」 と呼びます。
  「1里」 のサイズに関して言及するときは、650m 強の値になります。

  モジュールの寸法自体に議論が向くときには、局面によっては、「ゲージ」 の言葉を使うこともあります。  鉄道の世界で、軌道間距離を 「ゲージ」 と呼ぶように。 

基準線の選定

  想定した基準線に関して、実際の計測を行います。  最初は主要なライン (多くの場合 「里境」 に相当するライン) を扱いますが、そのひとクラス下と思われる 「坪境」 ラインについても言及します。  このレベルで矛盾がなくなったら、次の段階に進みます。

基準線の採択

  更に微調整を行った上で、基準線を 「採択」 します。  このレベルで、筆者としては、あたかもそのラインが現実のものであるかのように議論をします。

基準線の確認

  基準線を「確認」するのは、実は筆者の仕事ではありません。  過去/現在/未来の考古学的発掘現場の人たちの作業に依存します。 

ゲージの確認

  この段階で、「1坪」 の長さ = 1丁の長さについての考察が一旦完成します。  必要に応じて、他の典型的な地域から読み取られる、1丁 の長さと比較されます。  更に、往時の社寺などの建築に関する基本長さと較べることも意味があるでしょう。

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Web 地図を使って

Web 地図を使う

  原理的に最善の方法は、現地を歩くことです。  ただし、1300年前と違って平地にせいぜい湿地が絡んでいるような状況とは違います。  ビルが立って見通しが得られない。  道の真ん中に立って計測しようとすると、自動車が殺到する。
  次善の方法は、地図でしょうが、リアルの地図とヴァーチャルの地図とどちらが有用でしょうか?  結論的には、今では、ヴァーチャルの地図の方が使えそうです。  普通のインターネット環境なら、4~5種類の選択がありうるが、ここでは Google 地図を採択しました。  採択理由の細かい議論は省略しますが、精度と利便性の総合点が高いからです。

  Google 地図では、地図上の標的をW-クリックすることで、経度緯度が小数点以下6桁の精度の角度表示で示されます。  元々 GPS を意識していますから 『世界測地系』 に則っていますが、05年12月からは、『改訂・日本測地系=世界標準』 に整合させています。  『測地系』 のことは後で解説します。  提供される縮尺は、都市部では1/3000、多くの地域で1/8000です。
  因みに、国土地理院から標準的に提供される地形図は、全国をカバーするのは縮尺1/2万5千 が最高で、県都や主要都市部だけが 1/1万 の縮尺です。  また、行政 (主要都市) が用意している 「市域図」 には 1/2千5百 がありますが、およそ3平方キロが1枚に描かれ、300~400¥ するので、コスト的には大変です。

  戦後の年代ものの地形図に関しては、国土地理院が過去に発行したものが公共図書館に蓄積されているのでしょうが、1/2万5千 ではつらいところです。  戦前に関しては、「帝國陸軍陸地測量部(相当)」 が掌握していましたが、今注目している岡山市域では、明治31年[1898年]発行(28年測量) が最古で、実物が岡山大学で、一次複写物が岡山県立図書館で閲覧できます。
  陸地測量部のその次のバージョンは、明治43年測量だと理解されますが、筆者は閲覧できるところを確認していません。  この両者の違いは、日露戦争の結果を受けて、軍施設の拡充に走った時期を挟んでいる意味で、重要な意味を持っています。

Web 地図の精度

  Web 地図の精度には、おおきく2つの要素があります。  一つは、原図の設計精度あるいは信頼性によります。  も一つは、受け手の機器 (主にディスプレイ) の精度と、クリック位置決定精度によります。  それらを、原理に遡って検討することも可能でしょうが、実践で調べると、筆者の場合、1/3000 図について、各々1m程度を得ました。  既に述べたように、このプロジェクトでは、100m 強のライン間隔を計測するので、相対2% に達するかもしれない誤差はつらいところですが、意味のある同種のデータ間の平均操作が許されれば、相対0.5~0.3% 程度の信頼性は得られそうです。
  精度を調べる方法について述べると、前者では、ほぼ直線の東西、(南北) の道路を選んで、その路側を数拾メートル置きにクリックして、順次に緯度 (経度) を読み取ります。  その数値の僅かな変化量の 「最大公約数」 が設計精度を与えると理解できます。
  後者では、「定点読み取り」 を繰り返し、その値のブレを求めます。

  いずれの場合も、2点間の距離を得るには緯度経度の値の差から換算する必要があります。  特に、東西線上(南北線上)の2点の場合は単純で、経度差分 (緯度差分) に換算係数をかけるだけで得られます。  ただ、そのとき、今の場合では緯度差分に関しては大きい問題はありませんが、経度差分に関しては緯度によって換算係数が変わることは一応考慮に入れておく必要があります。  西瓜の縞模様を頭の中に描いてください。  縞模様の間隔は、赤道位置で最大で、北極に向かって狭くなっていくのです。

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予備知識

先達の仕事

  岡山市域の 「条里制」 について広範に述べた先達は、永山卯三郎氏です。  倉敷市史/岡山市史/岡山県史などで大きい部分を担った方です。  官学にあっては、岡山大学関係で石田寛氏、高重進氏に敬意を表します。  他にも、顕在・非顕在に仕事をなさった方はありましょうが、筆者の不勉強で名前を挙げることが出来ません。
  他の地域の研究については、断片的に参考にさせていただきましたが、落合重信氏の 「条里制」 (吉川弘文館 1967年初版 1995年新装版) の論考に依存するところが大きいことを述べておきます。

尺度と面積の名称

  古代には、我々の感覚からすると、長さと面積の単位に混用・重複使用があります。  また、その世界は単純な5進や10進の世界ではなく、6進、12進、60進の混在が見られて、戸惑うことがあります。  「6進法」 についての深い論考を、筆者は未だ知りませんが、非常に興味深いことです。
  要点だけを述べると、まず、これから度々出て来る 「里」、「坪」 は、実体としての 「区画モジュール」 を表現をすると同時に、「面積単位」 としての意味を持っています。  他方で、面積単位 『里』 は一辺が 「1里」 の正方形を意味し、『坪』 は 「1坪」 四方の面積です。
  長さ 「1坪」 (=1丁) は360尺と理解され、長さ 「1里」 は長さ 「6坪」 であると信じられています。

  なお、更に読者を混乱に追いやる話では、言語学的な解釈に依ると、長さ一坪[ひとつぼ] は 「ひとつ歩」 で、「歩」 とは360尺だと言われるのです。
  現在、習慣的に使われている面積単位に、町/反[たん]/畝[せ]/歩[ぶ] 、坪があります。  この話に立ち入ると、更に混乱に拍車を掛けるだけですが、触れておきます。  町/反/畝 までは10進法で、1反が300坪およそ1000平米です。  ここで、1歩が1坪なのは良いとして、1坪は1間角[6尺角]ですから約3.3平米です。(30進法が隠れています)  奈良期と近代では、面積の坪(歩)は1/3600のデノミネーションですね。  60間四角が1間四角になったのですから・・・(ここにも60進法が隠れています)  なお、1丁四角=古代1坪(60間四角) と近代の1町(50間X60間相当) がファクターだけ違って符合するのは、同じ語源に由来し、太閤検地の時代にデノミネーションが行われたという説があります。

  以上のいずれの論説に対しても、筆者としては完全に承服しているわけではありませんが、長さに関して1里=6坪=360尺X6 は承認しておきます。

「小尺」 と 「大尺」

  古代尺の寸法については(一応、奈良期において)、議論の決着が付いてない部分があるようです。  それゆえ、筆者も調べようとしているのですが・・・
  特に断りがないときは、「尺」 と言えばおおよそ30cmの長さで、敢えて言えば 「小尺」 に相当します。  他方で、わざわざ 「大尺」 と言うときには 1.2小尺を1大尺 に対応できると理解されており、「大尺」 を 「高麗尺」、「尺」 を 「唐尺」 と呼び分ける人もあります。
  ただ、ここからがややこしいところで、「大尺」 は往時存在しなっかたという説まであって、筆者は結論を得ていません。

  「唐尺」 は、29.6cm とするのが大勢のようで、筆者もこれを支持しておきますが、江戸中期以降でも 「尺」 にはいくつもの基準があって、明治政府によって、30.303cmに統一されました。  新度量衡法で尺が廃されるまで、この 「曲尺(かねじゃく)」 が用いられた(今でも一部専門職で用いられている) と理解しています。
  上に述べたように、1「里」=6「坪」、1「坪」=1丁=60間、1間=6尺 の対応は問題ないものとして、「唐尺」を採用すれば1「坪」=約106.6mになります(!)。  他方、「109mゲージ」説を尊重すると、1「尺」=30.14~30.39cm でなければなりません。  明治の太政官布告を古代人が予見していた? のでしょうか・・・

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